絶対零度

【JUNK CONNECTION発足案内(1980)におけるバンド紹介】

 海外でもポストパンクのひとつの動向としてフリーキーなアバンギャルドロックが台頭しているが、それに対応するように、この日本でも今までとは全くちがった音の流れが始まりつつある。昨年から活動を開始した絶対零度もその代表的なバンドだ。様々な音楽要素をぶち込んだ彼らのサウンドは常に不定形であり、そのスリリングな展開に一部で強い支持をつかんでいる。現在の学生の背負う負の部分を感じさせる暗いトーンのステージングも印象的だ。彼らのはじめてのレコーディングである今回のシングル盤も、そんな彼らの個性を充分に伝えられる、自由な空間を感じさせるものとなっており、今後のロックの動向を占うものとなるだろう。


【絶対零度HISTORY】

80年当時、次世代バンドの雄として注目されていた絶対零度。

79年秋、波止康雄(vo)笹山照雄(g)大熊ワタル(syn)中川一郎(b)きむらしんや(d)の編成で始動。

同年末、吉祥寺マイナーでデビュー以後、精力的に活動開始。

80年春以降は、新宿LOFT、渋谷屋根裏などにも進出、INU、オートモッド、ZELDAなどと共演。

ジャンクコネクションEPで注目を集めるが、音楽性をめぐり波止と他のメンバーが決裂、波止が脱退(本リリースを機に40年ぶりに再会を果たす)。

その後の第二期も、東芝EMIでのテスト録音や、名古屋・関西ツアーなどの展開があったが、81年春に解散。

一部メンバーの再始動により82年まで第三期の活動。

(第二期、第三期のライブ音源はディスクユニオンからCD化されている)

吉祥寺マイナーに象徴された地下音楽シーンと、ロフト、屋根裏界隈のバンドシーンを交差する存在として「フリーキー」「不定形」「カオス」などのイメージが強いが、本作では結成からまだ半年ほどの、若きメンバーたちの奔放なエナジーとパッションあふれる初期の演奏が鮮烈である。

特にベース・中川、ドラム・きむらのリズムセクションは、駆け出しとは思えない迫力とグルーブが痛快。

また、その強力なリズム隊に乗り自由奔放に暴れるのは大熊ワタルのシンセ、ノイズギター。後にクラリネットをメイン楽器に持ち替えた大熊の原点といえる最初期の演奏としても貴重なドキュメント。

きむらと大熊はその後「ルナパーク・アンサンブル」や「へぼ詩人の蜂蜜酒」、故・篠田昌已との協働(チンドン音楽リバイバル等)でも知られる。

大熊は現在も自身のグループ「シカラムータ」「ジンタらムータ」などで幅広く活動中。

きむらは自身の活動は休止しているが、東京チンドン倶楽部でチンドン楽士として活動継続中。

またギター・笹山照雄は後に「THE WEED」にキーボードで参加し、現在も弾き語り(「メビウスMöbius」)を続ける。

中川はアンビエントギター・ソロ(Ambient Samurai)での活動を継続。